2026.05.05
Q 2026年10月から施行されるカスハラ法の施行で、「契約書」や「重要事項説明書」を修正・追記しなければならなくなりますが、まずその前に、 入居者の新規契約に際し2020年度から「連帯保証人」を新たに設定しなければなりません。そして「限度額(極度額)」も。さて、署名を頂かなくてはならない箇所につき、連帯保証人からいい返事をもらえず、渋られている状況です。どう説明しますか?
2020年4月から民法(正確には債権に関する法律)が改正され、皆さんの法人と利用者(場合によっては家族)との入所契約・サービス提供契約等のなかで、連帯保証人が負担すべき限度額(極度額)を明記する必要が発生しております。
2020年4月1日施行の改正民法の465条の2に、「貸金等根保証契約の保証人の責任等」が追加されました。
民法第465の2
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
つまり、介護施設や介護事業所を営む皆様にとって、おそらくこれまで記載されていた身元引受人とは別に、連帯保証人を新たに設定した契約書をつくる、ということです。
「身元引受人」とは、利用者に何かあった際には、真っ先に駆けつけてくれる人、という考えで結構です。
次に、「連帯保証人」とは、金銭的支援が可能な家族なり親族となります。一般的な賃貸借契約において、連帯保証人が連帯保証人になったばかりに莫大な額の支払いを請求され、生活が維持できなくなるような、消費者金融的なトラブルを解消するため、介護サービスを提供する場合の契約においても、連帯保証人をつけ、その連帯保証人が支払うべき限度額(極度額)をあらかじめ設定しなさい、という考え方です。
これは、利用者家族側にとっても利用者の損害を保証する場合の限度額が確定している、という点で安心材料(?)になりますし(ただ、この限度額が数百万という額であれば、誰も連帯保証人になってくれない恐れも‥)、また皆様の法人・施設側にとっても、利用者の滞納や例えば利用者が死亡した際、通常の使用方法では考えられないほどの部屋の汚染等があった場合、連帯保証人等へ部屋の掃除や改修等の支払いを請求する際の目安になる、という利点があります。
では、「いくらの限度額(極度額)を設定すれば‥?」という点ですが、過去の賃貸借契約をめぐる判例では13ヵ月程度、というものが存在します。例えば、ひと月の介護・施設利用料が15万円と仮定しますと、その13ヵ月分ですと195万となり約200万円となります(例えば、家賃相当額の6ヵ月分というような文言ではなく、〇●万円という具体的な金額設定の方が望ましいです)。
当然、これ以上の額を設定することもできますが、皆様の法人・施設での利用者(家族)との入居契約書等の滞納に関する規定のなかで、例えば「6ヵ月以上の滞納が発生した場合‥退所して頂く‥」というような定めがあろうかと思います。この場合であれば、ひと月の介護・施設使用料の合計を15万円と仮定した場合であれば、90万円を連帯保証人が保証し、あと通常の使用では考えられないほどの部屋の汚染や破壊があるような場合の追加の改修費として100万円で算出するならば、上記の限度額(極度額)が200万円という設定も妥当であると思われます。
ですから、皆様の法人・施設の契約条項のなかの滞納等規定との関係やその他諸般の事情で連帯保証人の保証限度額(極度額)を設定すればいいと思われます。
大切なことは、連帯保証人の保証限度額(極度額)を設定しておく、ということです。
正確に言えば、契約書内に連帯保証人が負うべき限度額(極度額)を設定・明記しておかないと、連帯保証人に対して一切の保証を請求することができなくなる、ということです。
例を挙げると、
第〇●条
丙(連帯保証人)は、甲(法人・施設)に対して乙(利用者)が本契約上負担する一切の債務を、極度額200万円の範囲内で連帯して保証する。
といった感じです。
最後に、先ほどの条文に前後して新設されたものに、民法第458条の2「主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務」というのもあります。
民法第458条の2
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
[確認のポイント]民法第465の2 連帯保証人の保証極度額(限度額)設定について
- 身元引受人と、連帯保証人とを分けて、それぞれに署名・捺印を求める。
- 連帯保証人の限度額(極度額)は、月々の利用料、滞納規定でいう「期間」との関係で。
- 保証限度額(極度額)を〇●円、と金額として明記しておく。
- 連帯保証人から、状況説明を求められれば、誰が応えるのか、明確にしておく。
- ※ただし、厚労省からの通達でも、連帯保証人がいないことを理由とするサービス提供の拒否は認められない、ということですから、お気をつけください。