2026.05.06
Q. 「休職者の復職のタイミング」については、非常に参考になりました。施設内でもうつ病で休職し、来年度に復職してくる職員がいたものですから、復職前に法人として注意すべき対応が分かったように思います。感謝です。ところで、当法人でも現在、来年度に向けた採用のために、説明会や面接等を実施している最中なんですが、この面接で一体何を尋ねればいいのか、また聞いてはいけないのか、教えて頂ければ幸いです。
A. 皆さんの法人や施設にとって採用のための面接というのは、ほとんどのことが分からない、と思っていてください。
面接で分かり得る点としては、声のトーンや大きさ、日本語が伝わり、また話せているか、そして目の動きやまばたきの様子、視線から、第三者とのコミュニケーションが可能か、また精神疾患の有無程度だけなんです。「そんな、失礼な…!」と、応募者からも面接者からも叱られそうですが、面接で分かり得ることは、本当にその程度なんです。
たとえば、施設の面接者にお尋ねしますが、応募者の性別はどちらでしたか? 外見上はまったくの女性であったとしても、履歴書欄の性別に男と〇が入っていませんでしたか?
性同一性障害で外見を望む性に整えた方に面接でお会いしたことがありましたから。また、提出されたその履歴書に嘘がないことをどうやって確かめますか?
職歴欄に仕事を転々と、それも短期間で替わっている方の履歴書も多くみてきました。そして仕事をしていない期間も経歴書から判明した場合の、「一身上の都合で…」、「家庭の事情で…」という理由のほとんどがあてにならない情報だということをご存知でしたか?
どこの企業でもそうなんですが、人とのご縁から面接という幕が開け、そして育て上げ、法人への貢献につなげるまでの道のりは、非常に困難なことです。なので、人材を「人財」と言い換えることもよくありますよね。
では、限られた時間の中で、面接者は応募者に何を尋ねなければならないのでしょうか?
最近、とくに「履歴書に嘘があったり、前職を辞めた(辞めさせられた)理由に、セクハラやパワハラ、そして横領等があった場合、解雇できるのか?」というご相談が非常に多くなっています。労務管理上、これらの点は必ず尋ねておかなければならない類の質問になりますので、以下に説明したいと思います。
結論から言えば、面接で面接官が尋ねなかったばかりに、入職後過去の不祥事が分かったような場合、解雇等の罰則を強いることはできません。
応募者は自らの不利益となることについて、自発的に申し述べなければならない法的義務がないからです。勘違いして頂きたくないのですが、面接者がそれらのことについて尋ねたにもかかわらず、応募者が嘘をついていたような場合には、解雇の適用も可能となります。
つまり応募者にとって、面接者が尋ねた質問については正確に答えなければなりませんが、尋ねられなかったことについて、面接で不利となる事柄を自ら暴露する必要はないということです。ですから、「尋ねなかった」面接者が、面接者として不十分であったということになります。採用面接とは、法人側が応募者の人物像や意欲、同じ仲間として協力し合えるのかどうかを判断するものですから、法人側としては応募者に対し、誰が面接官になっても必ず聞いておかなければならない共通の質問をあらかじめ決めておく必要があります
ですが、面接者が応募者に対してストレートに「セクハラなどの行為は以前にありませんでしたか?」と尋ねることは、面接者にとってもまた尋ねられた方にとっても、違和感のある問いかけであると思います。これから苦楽を共にするかもしれない仲間に対しての質問としては、少し配慮の欠けた問いかけかもしれません。情報伝達ツールの普及と情報発信の容易さから、「●○の施設の面接では、こんなことを聞かれて腹が立った…」的なツイートが広まる恐れもありますから。
具体的には、前職退職の理由、前職と今との間にブランクがあるようなら、その間に何をしていたのか、退職までの経緯、転職の理由(どうして私たちのこの施設で働きたいのか)、懲戒処分の有無(「懲戒処分」の言葉の意味が分からないことも考えられますから、よりも具体的に)などについては最低限尋ねる必要があろうかと思います。ストレートに「前職までのところで、セクハラなどの問題行動はありませんでしたか?」と尋ねることは法的に問題とはなりませんが、尋ねにくい点であることには違いありません。最終的な確認として、面接の流れをみながら面接者が問いかけ、応募者がYES・NOで返事をし、面接者の手元にあるチェックリストに記入し、複数の面接者で確認する、という作業が現実的です。
人手不足が深刻な介護現場では、選りすぐることは難しいかもしれません。また、優しさや穏やかさ、派手(華美)ではないことなどが、介護で働く現場に求められているため、応募者の「人となり」を面接官は見ようとします。限られた時間、空間といった場面設定のなかで、採用していい人なのか、絶対に採ってはいけない人なのか、見極めるのは非常に困難です
企業によっては最終的に残った応募者に対し、興信所等に依頼をし身辺調査や経歴詐称がないかを確認する法人もありますが、介護の業界ではそのようなお金の使い方が積極的に意味をなすものであるとは思えません。可能なレベルとして、面接の結果、内定を出す前に応募者の氏名をフェイスブックやインターネットで検索し、面接のときよりは素顔に近い応募者の情報も調べる程度の努力であれば、皆さんの法人でもできるはずです。
最後に、不採用となった応募者の履歴書等は、必ず応募者本人に返してください。その際、返す履歴書の名前が、郵送の宛名と同じであるか、再度確認してください。以前、不採用となった応募者に履歴書等を郵送した際、「他人の履歴書が自分宛てに送られてきた。ということは、自分の履歴書は、別の採用されなかった人のところに渡っているのでは…」というクレームで、多額の慰謝料を支払う羽目になった法人もありましたから。
履歴書は、最高レベルの個人情報と考えてください。