2026.05.05

Q. 事業所で介護事故が起きた場合、介護にあたった当事者である職員個々の責任は問われるのでしょうか ?

A. 施設内や事業所内で事故が起こった場合の責任の所在について、

 ①職員に課せられる責任

 ②法人に課せられる責任

とに分けて解説したいと思います。

まずは、介護サービスを提供する場合、「誰と誰との契約なのか」という視点から考えてください。そもそも論から入りますね。

多くが、利用者本人と法人との契約ですね。介護保険の取扱い事業所のだいたい8割程度が、利用者と事業者(法人)との契約になっています。残りの2割程度が、利用者の家族と事業者(法人)との契約になっています。これを第三者契約といいます。

実際の契約の締結(書面に押印等の)に関しては、ほとんどの場合、認知症等で契約者当人である利用者はその行為ができないため、利用者の親族らを代理人として(法的な代理人ではない)署名・押印し、契約書や重要事項説明書等を完成させることになります。

ようするに、法人と契約をするということは(事業所に置いてある契約書をご覧になってください)法人のトップつまり社会福祉法人やNPOであれば、理事長が利用者と契約を結ぶということになりますし、株式会社等であれば、代表取締役(社長)と利用者との関係になります。

ですが、利用者と理事長や社長が契約を結んだとしても、直接理事長や社長が食事介助や入浴介助をするわけじゃありませんよね。介護職員がそれら諸々の業務を日々こなすわけですよね。

つまり介護職員は、契約の当事者である理事長や社長の代わりに利用者に対して介護サービスを提供するわけです。

介護職員は、理事長や社長からすると履行補助者という位置づけになり、履行補助者である介護職員の過失によって事故を招いた場合、利用者と介護職員との間には直接的な契約関係はないわけですから、介護職員個人が契約に基づく責任を問われることはありません

契約の当事者である法人トップの責任、つまり理事長や社長の責任と言うことになります。

しかし、虐待など明らかに介護職員による故意で事故が起ったような場合には、介護職員、個人に賠償責任が課せられ、さらに介護職員を監督する立場の法人のトップも使用者責任を問われることになります。

この場合の「介護職員」とは、単に正社員(常勤)の職員という意味だけではなく、例えボランティアや実習生による無償の活動であったとしても、法人側には責任が求められます。

その責任の程度は、正規の介護職員に課せられるほどの高い注意義務までは求められないにしても、「善良なる管理者の注意義務」(略称「善管注意義務」民法第400条および644条)を負うとされています。

こうした施設内や事業所内での介護事故に関しては、介助時また介助時以外(介助中ではなく、例えば利用者が一人で転倒したような、介護職員が関わっていない場合)、どちらにしても同じ責任が法人には求められます。

質問の、介護事故があった場合の、職員個人の責任に関しては、「ない」というのが答えです。

ただし、故意等虐待の可能性がある場合においては、刑事的な罪が問われますので、職員個人に責任が課される、という考え方です。