2026.05.06

Q. とりわけその家族からのクレームに日々悩まされる数年だったように思われます。先日も転倒事故があったんですが、家族からは「―おばあちゃんのことが心配なので、部屋にカメラをつけたいのですが…」という申し出がありました。ですが、「―おばあちゃんのことが心配…」というよりも、これまでの施設と家族との関係を振り返ると、「―職員が本当にちゃんと介護をしてくれているのか…」というように聞こえてなりません。 施設によっては、カメラを設置している法人もあると聞きますが、今後、転倒などの避けられない事故の事実確認のためにも、この家族が言うようにカメラの設置も積極的に考えた方がいいのでしょうか? 

A. これまでも、講演等で介護事業所における「記録」の書き方を、ケアプランとの整合性から整理する作業をお勧めしてきました。

つまり、転倒・転落や誤嚥等の介護事故が起きた場合、少しでも法人側の過失を少なくし、より科学的介護の根拠となるのが「記録」である、という発想ですが、カメラ等での録画をもって、犯人捜しをする行為が、次に問題になるのではないかと思っています。

最近の報道でも、高齢者施設内での職員による虐待行為を、家族が仕掛けたホームビデオから明らかになった事件もありました。

また、近年の「介護現場における生産性の向上」を合言葉に、DX化として「見守りカメラ」や「眠りスキャン」、「インカム」等デジタル機器の投入が、介護現場でも多く見られます。

ですが、施設内でのカメラの設置に関しては、プライバシーの問題を考えなくてはなりません。

プライバシーの保護とは、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義されています。高齢者施設のなかでは「個人情報の保護」と言い換えた方がより適切であるように思います。個人情報保護と高齢者施設との関係につきましては、過去の記事でも災害時の個人情報の取り扱いについて触れましたが、今回の相談内容は、災害時を含めた緊急時というよりはむしろ平時の監視(チェック)を含めた個人情報の取り扱いについてということになりますね。

過去の裁判事例の中にも、転倒のリスクとカメラ設置における録画保存が間接的な争点になったものも存在します。

特別養護老人ホームではなく、介護付き有料老人ホームの入居者が、食事中の誤嚥で亡くなったことに関する開設者の安全配慮義務が問われたケースでした。高齢者の誤嚥事故について、有料老人ホームの法的責任をめぐるケースは、法律雑誌等で公刊されたはじめての裁判事例でした。

判決結果としては、「当該入所者は常食を提供され、時折食事介助を受けることがあったものの、通常は自力で食事をしていた。当該入所者が食事介助を受けたのは、本件事故前の約三ヵ月間で10日程度であり、本件施設の介助職員等が記録していた介護日誌や看護記録を見ても、むせやせきを始めとする嚥下機能の低下をうかがわせる具体的症状が観察されたとの記載は存在しない(9月19日の介護日誌には、朝食時にむせ込みが見られたとの記載が存在するものの、同日以前の介護日誌や、同日後の同月20日、同月21日の介護日誌を見ても、食事の際にむせ込み等があったことはうかがわれず、上記の同月19日の記載をもって、直ちに嚥下機能の低下を具体的にうかがわせるような症状であると認めることはできない。)」として、誤嚥による窒息が生ずる危険があることを具体的に予見することは困難である、という判断から、遺族側の請求を退けた内容となっています。

この論議の中で、当該施設では、食事の様子を監視できるカメラが設置されていたわけです。しかし、誤嚥事故発生後、食事介助を受けていた10日間分の保存されていた録画が消去されていたことの是非をめぐって、「―介護サービス提供中に発生したすべての事故に関して、録画されたビデオテープを保存する具体的な義務を課した法令等は見当たらない。」という理由から、録画保存義務ついても棄却されたものでした。

一般的な個人情報の保護に関しましては、過去の記事でも触れたところでもありますが、生活相談員クラス以上の皆さんにとっては、今後、いくつかの切り口といいますか視点が必要になってくるものと思われます。

大きく分けると以下の3つです。

①「経済・消費上」のリスク

②「防犯上」のリスク

③「身体保護上」のリスクです。

①「経済・消費上」の視点では、消費者であり経済活動を営むことのできる人に対し、個人の情報が漏洩することで、その情報をもって消費を強いられる、つまり詐欺的な騙しの手法からの触手が伸びるというリスクが考えられます。

②「防犯上」の視点は、一番分かりやすいところですが、住所や氏名、電話番号が漏れてしまうことで、ストーカー被害にも及びやすい接触や接点を容易にしてしまうというリスクです。

③「身体保護上」の視点では、今回の被災地調査でも利用者の個人情報(氏名、住所、要介護度、既往歴、食事形態、家族との連絡先等)の把握の不備が、受入施設にとって利用の生命を左右することにつながるといったリスクがあげられます。

この記事をご覧になっている皆さんにとっての個人情報保護の視点からみたリスクは、おもに①「経済・消費上」のリスクと②「防犯上」のリスクに該当するように思われます。ですが、一般的に、高齢者施設で生活をする利用者と、個人情報保護との接点、つまり要介護高齢者にとっての個人情報保護という意味では、③「身体保護上」のリスクに尽きると思われます。ですから、利用者の個人情報を鍵のかかったロッカーにしまい込むのではなく、防災上の保護に加え、自己情報の開示請求があった際に、即座に提出できることが、本当の意味での利用者にとった個人情報保護という観点です。

となりますと、ご質問にあったカメラの設置に関しては、要介護者に対する個人情報保護の考え方に照らしていうと、身体保護上のリスク回避を主にしていることから、説明責任のさらなる工夫や、記録方法・内容の充実によって目的は十分に達せられると思われます。つまり、今回のご相談に限定して言えば、監視や責任追及を目的としたカメラの設置は、必要ないということになりますね。

必要ない、と書きましたが、例えば全居室へのカメラ設置は、時期双晶れまでも、講演等で介護事業所における「記録」の書き方を、ケアプランとの整合性から整理する作業をお勧めしてきました。

つまり、転倒・転落や誤嚥等の介護事故が起きた場合、少しでも法人側の過失を少なくし、より科学的介護の根拠となるのが「記録」である、という発想ですが、カメラ等での録画をもって、犯人捜しをする行為が、次に問題になるのではないかと思っています。

最近の報道でも、高齢者施設内での職員による虐待行為を、家族が仕掛けたホームビデオから明らかになった事件もありました。

また、近年の「介護現場における生産性の向上」を合言葉に、DX化として「見守りカメラ」や「眠りスキャン」、「インカム」等デジタル機器の投入が、介護現場でも多く見られます。

ですが、施設内でのカメラの設置に関しては、プライバシーの問題を考えなくてはなりません。

プライバシーの保護とは、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義されています。高齢者施設のなかでは「個人情報の保護」と言い換えた方がより適切であるように思います。個人情報保護と高齢者施設との関係につきましては、過去の記事でも災害時の個人情報の取り扱いについて触れましたが、今回の相談内容は、災害時を含めた緊急時というよりはむしろ平時の監視(チェック)を含めた個人情報の取り扱いについてということになりますね。

過去の裁判事例の中にも、転倒のリスクとカメラ設置における録画保存が間接的な争点になったものも存在します。

特別養護老人ホームではなく、介護付き有料老人ホームの入居者が、食事中の誤嚥で亡くなったことに関する開設者の安全配慮義務が問われたケースでした。高齢者の誤嚥事故について、有料老人ホームの法的責任をめぐるケースは、法律雑誌等で公刊されたはじめての裁判事例でした。

判決結果としては、「当該入所者は常食を提供され、時折食事介助を受けることがあったものの、通常は自力で食事をしていた。当該入所者が食事介助を受けたのは、本件事故前の約三ヵ月間で10日程度であり、本件施設の介助職員等が記録していた介護日誌や看護記録を見ても、むせやせきを始めとする嚥下機能の低下をうかがわせる具体的症状が観察されたとの記載は存在しない(9月19日の介護日誌には、朝食時にむせ込みが見られたとの記載が存在するものの、同日以前の介護日誌や、同日後の同月20日、同月21日の介護日誌を見ても、食事の際にむせ込み等があったことはうかがわれず、上記の同月19日の記載をもって、直ちに嚥下機能の低下を具体的にうかがわせるような症状であると認めることはできない。)」として、誤嚥による窒息が生ずる危険があることを具体的に予見することは困難である、という判断から、遺族側の請求を退けた内容となっています。

この論議の中で、当該施設では、食事の様子を監視できるカメラが設置されていたわけです。しかし、誤嚥事故発生後、食事介助を受けていた10日間分の保存されていた録画が消去されていたことの是非をめぐって、「―介護サービス提供中に発生したすべての事故に関して、録画されたビデオテープを保存する具体的な義務を課した法令等は見当たらない。」という理由から、録画保存義務ついても棄却されたものでした。

一般的な個人情報の保護に関しましては、過去の記事でも触れたところでもありますが、生活相談員クラス以上の皆さんにとっては、今後、いくつかの切り口といいますか視点が必要になってくるものと思われます。

大きく分けると以下の3つです。

①「経済・消費上」のリスク

②「防犯上」のリスク

③「身体保護上」のリスクです。

①「経済・消費上」の視点では、消費者であり経済活動を営むことのできる人に対し、個人の情報が漏洩することで、その情報をもって消費を強いられる、つまり詐欺的な騙しの手法からの触手が伸びるというリスクが考えられます。

②「防犯上」の視点は、一番分かりやすいところですが、住所や氏名、電話番号が漏れてしまうことで、ストーカー被害にも及びやすい接触や接点を容易にしてしまうというリスクです。

③「身体保護上」の視点では、今回の被災地調査でも利用者の個人情報(氏名、住所、要介護度、既往歴、食事形態、家族との連絡先等)の把握の不備が、受入施設にとって利用の生命を左右することにつながるといったリスクがあげられます。

この記事をご覧になっている皆さんにとっての個人情報保護の視点からみたリスクは、おもに①「経済・消費上」のリスクと②「防犯上」のリスクに該当するように思われます。ですが、一般的に、高齢者施設で生活をする利用者と、個人情報保護との接点、つまり要介護高齢者にとっての個人情報保護という意味では、③「身体保護上」のリスクに尽きると思われます。ですから、利用者の個人情報を鍵のかかったロッカーにしまい込むのではなく、防災上の保護に加え、自己情報の開示請求があった際に、即座に提出できることが、本当の意味での利用者にとった個人情報保護という観点です。

となりますと、ご質問にあったカメラの設置に関しては、要介護者に対する個人情報保護の考え方に照らしていうと、身体保護上のリスク回避を主にしていることから、説明責任のさらなる工夫や、記録方法・内容の充実によって目的は十分に達せられると思われます。つまり、今回のご相談に限定して言えば、監視や責任追及を目的としたカメラの設置は、必要ないということになりますね。

「必要ない」と書きましたが、例えば全居室へのカメラ設置は、時期尚早といったところでしょう。

多床室であれば他の利用者のプライバシーが守れないことになりますし、個室であってもスタッフが介助で出入りするわけですから、スタッフの肖像権なりプライバシーの権利が守られなくなるわけですから。