2026.05.06
Q. 新人採用に向けての注意ではなく、うつ病などの精神疾患で休職させている職員が、春に復職の希望を出しているのですが、はたして十分な戦力となり得るのか心配しております。人員配置の関係でも、有資格者でもある復職希望者を1としてカウントすれば、新卒者の枠を減らさなければなりませんし、また復職後にも業務に支障があるようであれば解雇し、新たに新人採用の準備にかからなければなりません。法人としても余分な人件費を抑えなければならない関係から、復職希望者もそして新しい人の採用もというわけにはいきません。以前の連載でも、うつ病等の職員に対する処遇についての回答がありましたが、休職そして復職という場合の手続き的な面で気を付けなければならない点を教えて頂ければと思っております。
A. 皆さんの職場をめぐる環境のリスクとしては大きく二つのことが考えられます。
一つは災害に対する備え
二つは日々発生している介護事故に対する認識です。
しかし、それとは別に三つ目ともいえるリスクも存在しています。それは人材のリスクです。人が集まらないという募集上のリスクと、辞めてもらいたくない人材が去っていくという流出のリスク。それに加えて、辞めてほしいスタッフがトラブルを噴出させながら居続けるというリスクが…。
うつ病等の精神疾患等で、期限を決めて休職させている職員の復帰する時期が迫ってきている場合、また、指示した休職期間内に復職を申し出ているような場合、どのような手続きが必要なんでしょうか?
管理者として最も難しい判断です。
彼らを休職にもってくるまでの説得だけに止まらず、復職してからの調整、そして復職後のトラブルに関して最悪、解雇というジャッジを下さなければなりませんから。また、判断をより難しくさせている要因が、通常、医師からの診断書によって治療の程度や完治までの目途がつくケガや病気ではなく、うつ病等の精神疾患の場合、診る医師が違えば程度や判断も異なるという点です。
なので、法人や施設側に求められる復帰への判断に、裁量の幅が大きくなるというリスクが付きまといます。ですから、法人や施設の就業規則で、復職についての意思決定するプロセスを定めておく必要があります。
たとえば、「(介護)職員の休職事由が消滅したと法人が認めた場合、または休職期間が満了した場合には、原則として休職前の職務に復帰させる。ただし、休職前の職務への復帰が困難または不適当と法人が認める場合には、休職前とは異なる職務に配置させることができる。」などの規定です。また、「休職期間が満了しも復職できないと本人の申告があった場合、または法人が判断した場合、原則として休職満了の日をもって退職とする。」という規定も同時に必要となってきます。
ここでのポイントは、「―(介護)職員の休職事由が消滅したと法人が認めた場合」という文言です。
休職している本人がかかりつけている心療内科医や精神科医の診断書で「復職可能」もしくは「軽作業であれば可能」と記載されていたとしても、それを法人側が認めるに足る根拠となっているかどうかについては、法人が指定する医療機関による診断書の提出を命ずることができます。「―法人が指定する医療機関による…」という文言も、今後新たに復職規定を設ける際には有効ですから、つけ加えることをお勧めします。これまでの記事でも、「相談員からのパワハラによって、うつ病になった…」と主張された場合の対抗策を載せましたが、過去の精神疾患による労使間での労働裁判も、精神疾患の発症を会社での業務に起因していると労働者側が主張する例も近年多くみられます。その場合でも、業務とうつ病との因果関係が問われるわけですが、休職期間満了時もしくはその前に、復職が可能かどうかの検証を行っていない場合、職員側からは「辞させられた」、「自分は避けられている」との誤解から、それからの話し合いが炎上することも容易に想像できることです。ですから、法人側から主治医に意見を聞くであるとか、法人の指定医の診断を判断材料にするだとかのステップが必要になります。
また、休職期間満了の直前に、話し合いの機会を設け、介護技術等で習熟を要する業務の場合、再教育の方法や手段を、たとえば併設しているデイサービスやショートへの配置転換や移動も考慮した結果であるのか、そして、他の職員との客観的な業務遂行能力上の比較を実施しておくことが望まれます。その上での判断であれば問題はありません。もちろん、頭の中で考えジャッジするだけではなく、その経緯を記録化し、同じような次のトラブルへの備えとしなければならないことは言うまでもありませんが。
つぎに、復職したのち、うつ病等の精神疾患が十分に寛解しておらず、業務の遂行やその責に堪えられない場合、解雇という判断をしなければなりません。厳しいようですが、解雇が必要な場合、その判断や選択を誤れば、事実とは異なる噂話が蔓延する時間的余裕を与えるだけではなく、それらが他の職員にも影響し、ひいては残って施設の柱となってもらいたい有能な職員ほど、やる気をなくし辞めていくことにつながりかねません。
介護現場での職員解雇について、これも以前の連載にも書かせて頂きましたので、復習の意味でポイントのみを列挙します。まず、法人の就労規則などで解雇処分の根拠規定が存在していることや、同じ経験年数や有資格者である他の職員との比較から処分が相当であり、社会通念上妥当なものであるのか、そして解雇処分を言い渡す前に本人に弁明の機会を与えているか、について再度チェックして下さい。
法人または施設内におけるこれまでのリスクといえば、難しい利用者を含めた家族からのクレームや、マンパワーの面での人材不足等が主でしたが、これからは皆さんのところで働く者からの労務管理というリスクも大きな企業並みに付きまといます。とくに新人スタッフには、親離れ子離れできていない親(働く者は未成年ではないでしょうから、保護者という表現は適切ではありませんが…)をも巻き込んだクレームにも対処の方法が必要となってきますので…。
皆さんの職場に辞めた職員の母親が怒鳴り込んでくるというケースも、多々伺っているところでありますから。