2026.05.06
Q. 「—職員の緊急連絡先を紙媒体で打ち出し、事務所に張り付けておくように…」といったような指示や、「—被災施設、また利用者の受入 れ施設、どちらの場合であったとしても、利用者にとって最低限の個人情報をすぐに取り出せるよう…」といったアドバイスがよく言われます。個人情報の管理や保管する場合、どのような点に注意をすればいいのでしょうか?
A. 災害時の個人情報の取扱いについて、ということでしょう。BCPの作成に関しては、「個人情報保護」というよりも「—個人情報の管理や保管する…」の方が重要な視点となります。
おそらく利用者や家族の「個人情報」を、鍵のついたロッカー等で厳重に保管し、またデジタル化されたデータによる個人情報も、ハードディスクやUSBの取り扱いに関して、厳重に金庫等で…と考えているのかもしれません。
結論から言いましょう。
いま、求められている個人情報保護とは、自己情報の請求があった場合に適切にかつ正確に情報が開示できることにつきます。
言いかえるならば、利用者や家族といった個人の情報を、いかに厳重に外部に漏らさないようにするか、ということではなく、「なぜ、こんなにも認定が軽いのか…」であるだとか、「どうして、こんなにも保険料が高いのか…」といった自己の情報に関する請求があった場合、速やかにそして適切な情報が開示できるのか、という視点からの発想です。
介護サービスを利用する高齢者にとっての「個人情報保護」について少し整理しましょう。
これまで、介護現場に求められた「利用者の個人情報の保護」についての意味合いは、「プライバシー保護」という発想で理解され、職業倫理的もしくは理念の範囲で語られることが多かったように思います。
個人情報保護法の実施については、20年ほど前の2005年度からはじまりました。
これまではそれほど重要視されていなかった利用者である高齢者の「個人情報」の取り扱いについて、注意を促すきっかけにはなったと思われます。
ただ、私たちが一般的に考える、「プライバシー(個人情報)保護」についての考え方と、介護現場のなかで留意しなければならない「プライバシー(個人情報)保護」とは必ずしもイコールではないという認識が必要です。介護サービスを利用する利用者の方は、認知症を患っていたり、また自らの意思を十分に表現できない方が多いのが実情です。そして、自らを守るための情報を取得する手段や、その方法に制限のある方も当然含まれます。
つまり、私たちであれば、プライバシーの侵害があった場合、自己の名誉も含めて 回復するための手段や情報を持ちえています。しかし、皆さんが日々接している高齢 者の場合には、プライバシーの侵害が発生したとしても、それに対抗する能力を持ち 合わせていない分、判断能力が十分にある私たちの場合のプライバシー保護とは意味 合いがまったく異なるということです。
さらに認知症高齢者の場合には、それらの侵害があったことさえ自覚できない人々である場合が往々にしてありますから。
個人情報保護法とは、その特徴を簡単に整理すると、個人情報を収集する際には、利用目的を明確にしなければならず、また目的以外で利用する場合には、本人の同意を得ないといけない、といったような内容です。これらは私たちでも、インターネットでの買い物や、簡単なアンケートに応える際にも末尾によく目にする文言でしょう。
この法律は、本人である個人の権利を定める法律ではなく、法人が守らなければならない義務を定めたものであり、個人情報の“不適切な取り扱い”に対して刑罰を科す仕組みはなく、制限を加える為の罰則法というよりもむしろ、権利意識の向上により利用者を保護するという性格の方が濃厚になったものです。
このような特徴をもつ個人情報保護法ですが、介護現場においては、今後どのよう な展開が求められるのでしょうか。冒頭に結論から入りましたから、繰り返しになりますが、利用者も含めた家族の個人情報を、いかに鍵のついた書棚で情報が漏れないようにするのか、という視点ではなく、「2025年問題」が過ぎた今も、想像していた通り、いや想像以上に、消費者として権利主張を行う高齢者の増加が著しいです。
皆さんも、最近の利用者やまたその家族からの過度なクレームや苦情、要求等のエスカレートさに辟易しているのではないでしょうか。
これからは、個人情報保護の点でも、“守り”の姿勢から、“攻め”への対策が迫られていると考えてくださ い。
具体的に、介護サービスの利用という点では、介護サービスを受ける際の条件や、また受けられなかった場合の判断、利用料についての条件等で、「自己の情報を監督機関に請求する」ということが考えられますから。
国は、医療や介護関係事業者に対し、利用者個人情報の適切な取扱いのためのガイドラインを示し、「大規模災害等で医療機関に多数の傷病者が運び込まれたような場合」や「災害発生時に警察が負傷者の個人情報等を照会する場合」など、本人の同意が確認できないような場合に関しては、個人情報保護法による制限を例外化する方針を提示しています。
また実際に個人情報保護をめぐる裁判事例でも、ホームヘルパー派遣申請に関する実態調査時の記録の開示請求について、開示することで家族間(嫁姑問題)での信頼関係に支障が生ずる場合、開示拒否事由に該当するか否かを争点にしたものもあります。
ここでも、情報をいかに外に漏らさないようにするのかではなく、情報開示に関する妥当性について争ったケースでありました。
介護現場での高齢者における個人情報とは、各関係機関との連携や調整が図られてこそ、生存そのものまでをも「保護」することができるという視点を忘れないでください。