2026.05.06

Q. 日々、頑張っている介護スタッフの働き方をみても、やはり労働時間が長い傾向にあり、そして残業時間についての考え方も個々にバラバラの状態です。とくに当法人には在宅部門も併設している関係から、訪問介護のヘルパーやデイサービスで働くスタッフ等についても、自宅に持ち帰って記録等の整理をしているようです。さらに当法人は部課長制をとっており、管理職と残業の時間管理も曖昧なままです。

A. 残業や、また持ち帰っての業務をめぐる管理については本当に難しいものがあります。
実際にこの一年ほどで労働基準監督署の調査が2倍以上に増えているという実態もあります。つい最近も、大手の社会福祉法人に労働基準監督署の調査が入り、職員が打刻するタイムカードだけではなく、パソコンのログインとログアウトの時間で労働時間を算出し、数千万円の残業手当を支払うことになった法人からの相談もありました。

介護労働の特殊性とでも言いましょうか、一所懸命さや想いを「より良い介護」と考えているきらいがあることから、「何を業務とし、またどこまでの介護を行えばいいのか」という点について、管理という事務的処理では割り切れないところがあるのも理解できます。

ですが、介護を仕事(やりがいのある)として専門職化するためには、労務管理という考え方から業務時間の管理が必要となってきます。

さて、よく部課長等の管理職には残業代を支払わなくてもいい、と思われがちですが、この部課長というのは、あくまでも法人内での決まり事であって、労働基準法上での管理職という考え方との整合性を図らなければなりません。

しかし、労働基準法上で「管理職」という定義がないものですから、労働局の通達から「管理職」を説明しますと、経営者と共同した立場で仕事をしている、出退社や勤務時間について制限を受けていない、その地位にふさわしい待遇がされている、等の条件を、皆さんの法人での管理者に当てはめ、該当するのであれば、残業代を支払う必要はありません。

ですが、ほとんどの施設の場合には、部課長にここまでの権限を与えていないと思われます。となりますと、就業規則や賃金規定等に事前に役職手当や管理職手当を規定しておく、想定される残業代にみなし残業代としての手当てに盛り込んでおく等の手続きが必要となります。つまり、これらの手当てで未払い残業代のリスクを抑えることができます。

あと、在宅部門で勤務するヘルパーや、デイサービスで働くスタッフ等の持ち帰っての書類整理や自宅での業務(残業)についてですが、在宅勤務での労働時間管理と同様の構成から考えてみましょう。
在宅の介護事業では、盆暮れ正月や深夜帯に、持ち帰って仕事をしたような場合も、上の問いかけに該当するものと思われます。

これらに関して、持ち帰り残業が恒常的に行われているような場合、労働時間として認められるのか否かという点です。

労働基準監督署からの調査が急に入る場合もあれば、法人に対して何らかの不満を持つ介護スタッフが、労働基準監督署に飛び込むケースも十分に考えられます。

「持ち帰り残業」のイメージについては皆さんすでにお分かりかと思いますが、法人のトップである使用者が承認していない持ち帰りの残業は、労働時間としてカウントされません。ただし、あきらかに通常の労働時間内に終わることができないような、介護現場でいえば請求業務等のような作業に関しては、使用者からの指示や承認がなかったとしても、事実上の黙認があったとして、労働時間としてカウントされることになります。

また、その時間内に事故やトラブル等が起きた場合には、労働災害との関係も生ずるおそれがあります。
在宅介護サービスでの労働時間の関係でいうなら、利用者の都合等でヘルパーが業務時間内に終わらず、次の訪問まで少し余裕があるため、ケアプラン上で約束された時間以上に30分ほどヘルパーがその場にいたと仮定します。

その際に誤嚥等の事故を起こしたとしたら…。業務外での事故ということになり、いったい誰が責任の当事者となるんでしょうか…?
労働時間の管理とは、これくらいナーバスなものなんです。
また、持ち帰っての仕事となると、メールや小型の記憶媒体等で、大量なデータを容易に持ち運ぶことができる現在の環境下にあって、個人情報の管理や法人内部の機密資料等の漏洩についても、労働時間の管理だけではなく工夫が必要なように思います。

いまでは、過度な「働き方改革」の意識が蔓延し、事業そのものが成り立たない事業所等が、訪問系事業所を中心に存在します。それら追い打ちをかけるような「人手不足」、利用者や家族からの「過度なクレームや苦情」が重なって、在宅系の介護事業所は存亡の危機にある、と言っても過言ではないでしょう。

管理者として、部下の働き方の調整等、難しい時代がまだ続きますね。